家族デーゲーム

親孝行の正体を探っていくブログです。

自分を送り届ける親孝行

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70歳目前の母親。ペン習字に手話、そして地元の民生委員など。彼女は最近とても忙しくなかなか連絡が取れない。年老いてゆく親が家の中に篭ることを心配する世間様には申し訳ないが、我が家においてその心配は全く不要である。

 

母親は数年前に胃ガンの手術を2度している。一度目で3分の2を、二度目で残りを取り、今は十二指腸か何かを結び食道としている。空腹感はあるらしいがそれが本当の空腹なのか分からず、気付けば食べ過ぎて気分が悪くなるという時がある。

 

一度目の手術のときは病院のベッドの上で誕生日を迎えている。不安で不安で仕方のない誕生日だったろうと思う。ただ、あれ以来体調はすこぶる良く、段々と若返っているような印象すら受ける。

 

そのガンの手術をする前くらいだろうか。自分の更年期障害について話してくれたことがあった。これからおばあちゃん家に向かおうという楽しい車内のひと時だった。小学校と中学校の息子2人に対し愛情的なものを何も感じない時期があったらしかった。人知れず病院に通い先生に相談していた。一番近い存在の父親に相談したところ、「そんなこと知らんがな」的な反応をされ、父親に対する信頼をほぼ100%なくしたような話も聞いた。

 

当時の父親は企業戦士。仕事のこと、家族の将来のことなどアレコレ頭がいっぱいで相談に乗るだけの心の余裕がなかったことがその態度の真相だと信じたい。父親は本当は心の優しい人なのかもしれないが、幼少期の我々にそんな一面が垣間見えたことはなかった。市営住宅の4階から見下ろせば、駐車場に彼の車が戻ってくる。今日はどんなカオスな食卓になるのだろうと思う日々が長らく続いた。

 

父親に愛想をつかした母親がその後どのように更年期障害を克服したかまでは聞かなかった。でも見えないところでいろんなドラマがあったのだなと母親のことをより身近に感じた。

 

母親が優しいのはあたりまえ。でもどのように優しいかを語れる子どもは少ない。うちの母親の優しいところ。それは我々兄弟を自由に泳がせてくれたことにある。自分の思うようにやりなさいという教え。噂では手取り足取り教えると、真面目で過敏な人間が出来上がるらしい。真面目で過敏な人間と誰が付き合いたいと思うだろうか。つまり、ウチの母ちゃん万歳、なのである。

 

数年前からやっていることがある。もし母親の誕生日に何をあげればよいか浮かばなかったら、帰省するか手紙を送るか声を届けるかする。母親はモノが欲しいわけではない。自分の分身の温もりが欲しいのだ。それ以上のプレゼントなどこの世に存在するわけがないのだ。相手を思う気持ちはいろんな形で表現できる。

 

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