家族デーゲーム

親孝行の正体を探っていくブログです。

昼間のパパはちゃんと働いている

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先日知人から、自分の職場に外注業者として来ていた父親とバッタリ会った、という話を聞いた。普段顔を合わせても何を話してよいか分からないのに、仕事場で会うとなったら尚更、どう反応していいか分からず困ったと苦笑いしていた。

 

その偶然に驚いた父親が発した言葉は、「おまえ、ここで何してるんだ」だったらしいが、仮に仕事以外のナニかだったらそれはそれで大問題に違いない。人は本当に咄嗟のことに遭遇したとき、分かりきったことしか言わないのかもしれない。

 

この話を聞き、昔のことを思い出した。高校の頃に校内で父親と会ったときのことである。それは父兄参観といった類のものではなく、職員室にコピー機を納品に来た「仕事中のパパ」という設定であった。

 

我が家の場合、父親が異常にシャイであまり自分のことを話さないため、父親の仕事について、機械の修理をしているらしい程度の認識しかなかった。それなので、このとき初めて父親の具体的な仕事の雰囲気を掴んだのであった。きっと先ほどの友人同様、このときも互いに掛けた言葉は「何してるの」だったに違いない。

 

その偶然からしばらく経ったある日曜。父親が客先にコピー機を納品するのに付き合わされた。重たいから運ぶのを手伝ってくれ。そんな理由だったが、実際のモノは一人で十分に運べる程度の重さだった。今思うにあれは、不器用な父親なりに普段あまり会話のない息子と貴重な時間を過ごすための誘い文句だったのだ。どこまでいってもシャイな昭和人。

 

共同作業をしたからといって、そのあと会話が増えたということはなかった。ただ、仕事中のパパを見たことで距離が少しだけ近付いた気はした。たまにテレビでパパの働いている姿を見に行こうといった企画があるが、なぜああいったものが昔から存在するのか、少しだけ分かった気がした。まあとにかく、父親は不器用くらいがちょうどいい。

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