家族デーゲーム

親孝行の正体を探っていくブログです。

おばあちゃん家で合宿を張った孫の話

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どんな理由であろうと、孫が遊びに来てくれることはこの上ない喜びに違いない。子どもは親孝行と並行して、ジジババ孝行というのを自然とやっている。

 中3の夏休み、田舎の婆ちゃん家で合宿を張った。秋口の体育祭に向け、もっと言えばクライマックスの棒倒しに向け、まわりに見せびらかせる格好のいい体型を作るためであった。当時まだ家庭用ごみ袋として利用されていた黒のポリ袋で作った自家製サウナスーツといくつかの道具を携え、15歳のジョーは暫しのあいだ実家を離れた。

 

婆ちゃん家の庭には大きなビニールハウスがあった。何かの野菜を栽培しているわけではなく、単なる物置となっていたそのハウスは、あちこちに穴が開いていたため、基本下界の温度とさほど変わらないはずであったが、なぜかしら異常に温度が高かった。まだヨチヨチの頃からその巨大サウナが気になっていたらしく、今回の合宿場所は即決だったというわけである。

自家製のサウナスーツを着て何度も何度も入った。九州南部の真夏がどれだけ暑いか。経験した人間なら誰もがダンマリする。ただ、ジメジメ感のないカラッとした暑さというのはなかなかにいいものだ。

 

老夫婦しか住んでいないはずなのに最新式のランニングマシンが置いてあったり、老夫婦しか住んでいないはずなのに飲みものすべてが炭酸飲料であったり。猛烈に走り込んだあと、猛烈にサウナで水分を飛ばし、それに対する褒美として炭酸飲料を猛烈に飲んで体に癒しを与えた。

夜になると、老夫婦しか住んでいないがゆえのNHKにより、たぶん偏りは少ないであろう情報に目を通した。田舎の婆ちゃん家の別名は、モノがなんでも揃っている場所。我々が子どもの頃はそういうことがまだ言えた時代だったような気がする。

 

婆ちゃんは、我が娘の二男坊である俺をとても可愛がってくれた。これは私見だが、親戚の中で自分が一番可愛がられていたと思う。他の子には内緒だからと、お年玉のタイミング以外で小遣いをちょこちょこくれた。長女の息子とは言え、親戚の子どもの中で最年少でありもっとも遊びに来てくれる男の子が愛おしくてたまらなかったのだと思う。とは言え、実は他の子どもにも同じように接していて、「みんなに優しかったお婆ちゃん」という記憶が、知らず知らずのうち我々の中に出来上がってしまった可能性もなくはない。

 

夏休みの半分を費やした合宿が終わったとき、体型は夏休み前とさほど変わっていなかった。どんなに運動してもその水分補給が実のところ単なる砂糖水である炭酸飲料では痩せるわけもなかろう。そういうことらしかった。体育祭当日、見せびらかせるほどの体型になっていない少年は、棒倒しで少し控えめに振舞った。

いくら動機が不純であっても孫が遊びに来てくれることはこの上ない喜びに変わりはない。ストイックになれるナニかを見つけた15歳の夏。とても良い思いである。その合宿所となった家に、ジジババの姿はもうない。

 

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