家族デーゲーム

親孝行の正体を探っていくブログです。

新聞配達と親孝行

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中学時代というのは誰にとっても淡い思い出の塊に違いない。淡い思い出の一つに、個人的には新聞配達が挙げられる。3年間やっていた。新聞配達といえば、世間的には「家計を助ける親孝行な子ども」というイメージだろうか。

 

たしかに、当時の担任にアルバイトの申請を出したとき、「経済的な理由なの?」と訊かれた。実家が市営住宅ということも手伝ったか。で、意外に知られていない事実だが、新聞配達少年には敵が多い。今日はそこにフォーカスする。

 

まずは眠気。早朝の3時4時になれば自然と目覚める巷のじいちゃんたちと違い、成長ざかりの少年が早朝に目覚めることはまずない。前の日に学校でうんと遊び、家に帰れば夜遅くまでテレビをうんと見る。かなり頑張らなければ、もしくは親のモーニングコールがなければ、定刻に起きて出社などとても難しい。

 

次に空模様。噂によると現代は、雨が降りそうな日は新聞が最初からビニール袋に入った状態で各配達所に運ばれてくるらしい。当時は数部の新聞を除きほぼ裸の状態で届けられていた。なので、配達中に雨の降り度合いを確認し、こりゃやべえなと思ったら細長い専用のビニール袋に各自で新聞を詰める作業をしたものであった。

 

その作業にしくじった場合、びしょ濡れになった新聞がポストに収められることになり、当然のように後でクレーム沙汰となる。我々ダメ学生のフォローはいつも上長のおじちゃんだった。「管理職は部下の尻拭いが仕事」。これはどの業界においても通例である。

 

新聞配達少年の最大の敵は一軒家に潜んでいる。番犬および野良猫たちといかに対峙するかが山場となる。冬ともなればあたりは全く見えない。極度の緊張感の中でいつ出てくるかもしれない彼らの気配を察し、一軒家の外玄関を開けなければならない。

 

「団地と一軒家どっちがいい?」。最初にそう訊かれる配達所もあるだろう。ここで指す団地とは、エレベータのない5階以下の集合住宅を言う。「5階まで階段なんか登ってられるかよ」。そう考える若人は安易に一軒家を選ぶのだが、それが逆に命取りとなる。

 

最後は郵便受けだ。団地・一軒家どちらにも共通する敵。新聞がうまく入らない形式のものに出くわすと、ない知恵を絞って何とかしなければならなくなる。最終的に知恵が出てこない場合は、原形を留めないくらいの形に強引に折り曲げ、無理繰りポストへ放り込むことになる。そうした場合、ずぶ濡れの新聞紙同様に大きなクレームとなり、上長のおじちゃんが再登場する羽目になる。「管理職は部下の尻拭いが仕事」。これはどの業界においても通例である。

 

新聞配達で手元に入ったお金はどうしたのか。家庭に収め、ちゃんと親孝行を果たしたのか。残念ながらそれはなかった。中学生はいろいろと誘惑が多い。違反の学生服購入やゲームセンターの終わりなき戦い。そして最終的にはエロ本。実家に一円たりとも入ることはなかった。だが、中学・高校合わせ、食費と学費以外で親に金を出させた記憶がまるでない。それは親も公認。結果として十分に親孝行をしていたのではないかと今では思っている。

 

哀しいかな、新聞という媒体は時代の流れによってあの時ほどの需要はない。新聞配達少年は今どれくらいいるのだろうか。上長のおじちゃんにどれほどの迷惑を掛けているのだろうか。あの時代性に生まれたからこその話が自分にはできるのではないか。そういう思いでこの記事を書いた。いつか、新聞配達を経験した元少年たちでいろんな苦労話を語り合いたいものである。

 

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