家族デーゲーム

親孝行の正体を探っていくブログです。

もし私がいなくなったら

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あなたの人生からもし私がいなくなったら困りますか?。

そんな質問を急にされたとき、どんな回答が用意できるだろう。本当に大切な相手ならば自然に言葉も出てくるが、多くの場合、なんとかして捻り出そうとするのが精一杯に違いない。

 

所詮我々は、あなたがいなくなることでこれだけ困るのだということをほんの少しも伝えきれな小動物の集まりなのだ。ここで少しばかり、カツアゲを例にこの話を掘り下げてみたいと思う。

 

ある日街を歩いていて、強面のチンピラたちに呼び止められたとする。リーダーである兄貴の背後には数名の舎弟が控えていて、それぞれに歯がなかったりする。カツアゲの常套手段である「とりあえずジャンプ」を強要され、従うことにした。

 

顔に傷つけられるのも困るし、この場から早く逃れるためにも犯人の期待する金銭の擦れ合う音を出さなければ。気持ちだけが焦る。しかし、いくらジャンプを重ねてもそれらしき音は出ない。歯のない舎弟たちの苛立つサマが手に取るように分かった。

 

そんな中、着地した勢いでポケットからこぼれ落ちたのは携帯電話。機転の利く兄貴は、同じ財産という意味ですかさず強要するターゲットを金銭から携帯電話へと変更した。歯のない舎弟たちは暇になってきたのか、鼻クソなどほじっておる。

 

兄貴が口を開いた。「よくも手こずらせやがって。だがな、これでおまえも終わりだ。(携帯電話を開きながら)長年大切にしてきたこいつらの連絡先を今から1件ずつ消していってやろうじゃねえか。つまり、今日からおまえは一人ぼっちになるんだ。うっしっし」。

 

さすが兄貴~!(携帯電話が財産という本当の意味を分かっていない舎弟たちが兄貴へ喝采を送る)。意外な展開に戸惑うこちらの姿を斜に見ながら、兄貴はエアーたばこに火を付け、ある提案を持ち掛けた。

 

「とは言っても、オレもそこまでワルじゃねえ。少しだけチャンスをやろうじゃねえか。この電話帳に入っている連中がおまえの人生にどれだけ必要なのか、ア行の奴から順にひとりずつ言っていくんだ。そいつらに対するおまえの気持ちが少しでも俺に伝わってきたら、そのときは連絡先を消さずすぐに解放してやる」。

 

さすが兄貴~!(再び、携帯電話が財産という本当の意味を分かっていない舎弟たちが兄貴へ喝采を送る)。意外な展開に戸惑うこちらの姿を斜に見ながら、兄貴がエアーたばこに勢いを付ける。視界の端のほうでは、「兄貴の優しさが分かったか!」などと称賛を重ねる舎弟の姿がチラつく。

 

さて。このような状況に陥ったとき、あなたならどれほどの連絡先を守ることができるだろう。自分の場合、残念ながら多くの消去は免れない。つまりそれほど、今まで相手に深くコミットしてこなかったということが言える。「これからの時代、上辺だけの付き合いをしている人間からは容赦なく人脈が奪われていく」。そういった心のメッセージがこのカツアゲ寸劇を生んだに違いない。

 

兄貴は最後にこう言った。「もし自分がいなくなったら相手がどれだけ困るか、あんたも知りたいだろ?。それならまず、今日からをちゃんと生きることだ」。去り行く男のうしろ姿を見ながら、俺は精一杯の喝采を送った。「さすが兄貴~!」。

 

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